
ご無沙汰している。 知っている人は知っていると思うが、2025年6月。 私のジャカルタでの主夫生活・第二章が開幕した。
前任地はラオス・ビエンチャン。 「世界一何もない首都」と呼ばれる場所で、静寂と平穏(と少しの退屈)をむさぼっていた男が、次に放り込まれたのはジャカルタである。
「東南アジアのカオスの中心」 「世界で最も渋滞する都市」 「洪水と共に生きる街」
字面だけで胸焼けがする。 強烈なキャッチコピーのオンパレードだ。 しかし、実際に行ってみないとわからない。意外と便利かもしれないし、暮らしてみたら天国かもしれない。 期待と不安を胸に、私はジャカルタの地に降り立った。
結論から言う。 初日からツッコミどころの連続だった。
カオスと笑顔とネズミの洗礼
到着直後に感じたこと、体験したことを記録しておく。 いずれ誰かの役に立つかもしれないし、立たないかもしれない。
1. 空港のポーターは優しいが、無茶を言う
スカルノ・ハッタ国際空港。 ダンボール6箱、スーツケース4つ、そして子ども2人。 もはや軽い夜逃げ、あるいは民族大移動である。
手荷物受取所で完全にフリーズしていたら、ポーターのおじさんが声をかけてくれた。 地獄に仏とはこのことだ。 しかし、私は現金(ルピア)を持っていなかった。
「ルピアがないんだ」と伝えると、おじさんは満面の笑みで即答した。 「じゃあ、そこの銀行で両替してきなよ!」
いや、違う。 両替所に行く余裕すらなく、この荷物の山と子供たちを前にして身動きが取れないから、ここで固まっているのだ。
2. 事前登録(IMEI)という名の壮大な無駄
インドネシアでは、海外から持ち込んだスマホは「IMEI登録」をしないと90日後にSIMが使えなくなるらしい(Wi-Fiは使える)。 私は優秀な主夫なので、日本にいる間に時間をかけてWebで事前登録を済ませていた。
準備万端。完璧な男だ。 そう思って空港のカウンターでドヤ顔でQRコードを見せた。
スタッフのおじさんは、にこやかに微笑み、そして私のQRコードを華麗にスルーした。 笑顔だけは一丁前だった。 そして、私のスマホを手に取り、無表情で「最初から」入力を始めたのだ。
私が日本で夜な夜な打ち込んだあの事前情報は、一体どこへ消えたのか。 結局、その場でゼロから登録し直され、4台のスマホ登録に30分もかかった。 インドネシアでは、過去を振り返ってはいけないらしい。
3. 渋滞というより、ただの「密」
道路に出る。 車とバイクの数が尋常ではない。 ジャカルタの渋滞は覚悟していたが、想像を軽く超えてきた。
これは「渋滞」ではない。 「ずっと道が混んでいる状態」が日常なのだ。 しかも、よく見ると走っている車の多くが、軽くボコボコに凹んでいる。 この街で無傷で生き残ることは不可能だと悟った。
4. コンビニ天国、ただしSIMはない
街を走ると、至る所にコンビニがある。 ファミマ、Indomart、Alfamart。 なんてコンビニエントなんだ。
ネットの情報で「コンビニでSIMカードが買える」と見たので、何店舗も回ってみた。 しかし、見事に全店舗で「在庫ゼロ」である。
店員に「どこで買えますか?」と尋ねてみた。 すると彼は、半笑いでこう答えた。
「Another store? 😏(別の店に行けば?)」
いや、お前。 私が今、何軒もの「Another store」を巡り巡って、お前の店に辿り着いたという悲しき背景を想像できないのか。 その「別の店」が、ここなんだよ。
5. ネズミと踊るアッチョンブリケ
仕方なくコンビニの店内を見渡す。 野菜、果物、肉。 なんでも揃っている。日本のコンビニ以上の品揃えだ。
「お、これなら意外と普通に暮らせるじゃん」
そう安堵した瞬間だった。 私の足元を、黒い影が一直線に駆け抜けていった。
ネズミだった。 しかも、なかなかのサイズ感。
完全に気を抜いていた私は、スーパーマーケットの通路のど真ん中で、両手を顔の横に挙げて「ヒィッ」と飛び退いた。 ピノコである。 手塚治虫の漫画でしか見ない「アッチョンブリケ」のポーズを、40代の男が異国の地で全力でキメてしまった。
ビバ、ジャカルタ。
結論:ユニクロがあれば生きていける
空港からホテルに到着するまでの短い道のりで、私は「ユニクロ」の看板を4回も見た。
世界一何もないラオスから来た私にとって、ユニクロが4つもある街は、もはや大都会の頂点である。 服が買える。しかも日本のクオリティで。 これなら、しばらく日本を恋しがることはないだろう。
カオスと渋滞と、笑顔でスルーされる虚無感。 そして、足元を駆け抜けるネズミ。 ジャカルタは、一筋縄ではいかない街だ。
でも、まあいい。 ユニクロがあるから。
これからこの日記で、インドネシアでの生活情報、子育て、趣味のガジェット、そして主夫のどうでもいい日常のリアルを、ゆるっと残していく。
ジャカルタ生活、第二章。 とりあえず、部屋のアリとコンビニのネズミには負けないように生きていく。