レバラン休みの話である。
ジャカルタは、街ごと少しお休みモードに入る。
学校も長いこと休み。スーパーまで閉まることがある。
子どもたちは元気。
これを2週間アパートの部屋で受け止め続ける元気も体力もない。
ということで、旅行に行くことにした。
行き先はシンガポール。
何度でも言うが、お金持ちではない。
ジャカルタに住んでいると、シンガポールが近いのだ。
飛行機で2時間。感覚としては、ちょっと遠めの国内旅行である。
関東に住んでいる人が「山口県あたり行くか」くらいの気持ちで行ける場所に、たまたまシンガポールがあるだけだ。
それでも「海外旅行?けしからん」と思う人は、ここでそっと閉じてほしい。
胸糞悪くなる人は閲覧注意である。
私はただ、近いから行っただけである。
…のはずだった。
- 第1章 — 2時間で行けるはずが、全然着かない
- 第2章 — 空港で無理やり楽しむしかない
- 第3章 — 深夜到着後もまだ終わらない
- 第4章 — スーツケースが開いた朝
- 第5章 — USS、娘ギリギリ通過
- 第6章 — 乗れないものもある。でも娘は別の楽しみ方を見つけた
- 第7章 — 結局、課金が最強
- 終わりに
第1章 — 2時間で行けるはずが、全然着かない
今回の旅行、初日から見事に壊れた。
使ったのはAirAsia。
ここで薄々嫌な予感がした人は、だいぶ旅慣れている。
まず前日に連絡が来た。
朝の便が、夕方の便に変更になるという。
大幅遅延である。
これだとシンガポール到着がかなり遅くなる。
ホテルに着く頃には、もう夜。初日がほぼ消える。
最悪だなと思いながら代替案を探していたら、クアラルンプール経由で、夕方くらいには着けそうな便が見つかった。
これならまだ助かる。
そう思って変更した。
甘かった。
ジャカルタからクアラルンプール、そこからシンガポール。
乗り継ぎ時間は、30分しかない。
これが不安だった。
懸念しかないので、何人かのAirAsiaのスタッフに確認した。
すると、ものすごく明るい顔で皆が「大丈夫」「余裕」「荷物もちゃんと運ばれる」と言う。
フライトが遅れることにとても慣れてる感じである。
あまりに堂々としているので、逆にこちらが不安になるタイプの安心感だった。
で、結局どうなったか。
搭乗直前でこのフライトもめちゃくちゃ遅れ、クアラルンプールに着いた時には、乗り継ぎ便はもう出ていた。
終わりである。
結局、次の便は夜8時半発。
最初に遅延した直行便とほとんど変わらない。むしろ少し遅い。
「何のために変更したんだろう」
旅行初日に出ていい感情ではない。
旅行初日に得ていい疲れではない。
第2章 — 空港で無理やり楽しむしかない
こうなると、もう楽しむしかない。
クアラルンプール空港で、時間を潰すことになった。
せっかくなので、2カ国も旅ができたと思い込んでみた。
マレーシアで人気だという空港にあるカフェに行った。
Oriental Kopiでエッグタルトを食べる。
これは美味しかった。
そして大きかった。
食べ物がちゃんとしていると少し救われる。
ただ、AirAsiaは最後までAirAsiaだった。
疲れ切っていたので、少しでも休もうと早めにゲートへ移動。
やっと落ち着けると思ったところで、ゲート変更。
しかも、痩せてしまうくらいの長距離。
真反対まで歩くことになった。
文字通りの真反対。
手荷物検査をも戻り、到着場所に戻って反対側のエリアに移動する。
それでも子どもたちは、親より順応が早い。
息子は夢にまで見たというドライマンゴーをお土産屋で見つけ、
娘はマレーシアにもシンガポールにも一切関係のないメイク道具のおもちゃを買っていた。
まあ楽しんでいるなら何よりだ。
第3章 — 深夜到着後もまだ終わらない
なんとかシンガポールに着いたのは夜10時ごろ。
疲れきっていたが、シンガポールはきれいだった。
ジャカルタも都会だと思っていたけれど、やはり違う。
空港のトイレに入った息子が、いきなり感動していた。
綺麗だと。清潔だと。
トイレで感動する旅行の始まりも悪くない、か…。
でも、たしかにきれいだった。
息子と2人でトイレ入り口の評価パネルで「Excellent」を押した。
「もう来てよかったのでは」と思いかけた。
思いかけただけだった。
ホテルに着いたのは11時ごろ。
さあ寝よう、と思って部屋の前まで行ったら、カードキーが動かない。
ここまで来てそれか、と思う。
ロビーに戻る。
疲れている。子どもも眠い。親も当然眠い。
ようやく部屋に入れたと思ったら、今度は備え付けの水のパックがうまく開かない。
注ぎ口みたいな部分を引っ張って開けるタイプだったのだが、2回連続でちぎれた。
なぜ寝る前に、こんな小さな敗北を積み重ねなければならないのか。
そして極めつけ。
子供達のお気に入りのぬいぐるみを出そうと、小さい方のスーツケースを開けようとしたら、暗証番号が合わない。
設定していた番号で開かない。
意味がわからない。
旅の初日が終わるタイミングで、スーツケースが開かないという新しい問題が発生した。
もうここまで来ると、笑うしかない。
いいことも悪いこともある、ではない。
この日は、だいぶ悪いことに寄っていた。
第4章 — スーツケースが開いた朝
2日目の朝。
まずやるべきは、スーツケースを開けることだった。
水着も入っている。着替えも入っている。
これが開かないと話にならない。
3桁の番号なので、理論上は1000通りで開く。
1~2秒に1パターンなら、30分くらいで全通り試せるのではないか。
そう思って気合いを入れて、なんならスパイ気分で「000」から取り組み始めた。
なんと15秒くらいで開いた。
なぜか「014」で開いた。
なぜその番号になっていたのかは、わからないが、とにかくあっさり開いた。
朝からちょっとした奇跡である。
「今日は最高の日になるかもしれない」
前日がひどすぎたので、スーツケースが開くだけで希望が持てた。
もともと私は幸福を感じる閾値が低い。
第5章 — USS、娘ギリギリ通過
この日はUSSに行く日だった。
チケットは事前に取っていたので、タクシーでそのまま向かう。
シンガポールではGrabが普通に使えて、クレジットカードを紐づけておけば現金なしでほぼ完結した。PAYPALでもいけた。これは本当に楽だった。
10時ごろ到着して、そのまま入園。
まず向かったのは、ミニオンのアトラクション(Despicable Me Minion Mayhem)。
人気らしかったが、30分も待たずに乗れた。
問題は、娘の身長だった。
USSは、思っていた以上に身長制限が厳しい。
「これにそんな制限いる?」みたいな乗り物にも、しっかり線が引かれている。
娘は100センチあるかないか。
このミニオンのやつは102センチだった。
かなりギリギリだった。
入口でなんとかOKをもらって安心して並んでいたら、乗る直前でもう一回測られた。
なぜ2回目があるんだ…。ここでダメだったらどうすれば。
笑顔で通してもらえた。良かった。
で、乗った。
娘には、どういう乗り物かあまり細かく説明しないまま来てしまっていた。
すると、思ったより揺れた。
迫力があった。
ずっと隣から叫び声が聞こえてくる。
見事な絶叫だった。
あまりに叫ぶので、「これ号泣しているな」と思った。
でも終わって覚悟して顔を見たら、泣いてはいなかった。
ただ全力で叫んでいただけだった。
思ったより強かった。
怖かったみたいではあるが、割とすぐ落ち着いた。
ただ、今でも時々、「私は乗りたくなかったのに乗せられた」と恨み節を口にしている。
第6章 — 乗れないものもある。でも娘は別の楽しみ方を見つけた
そのあと、セサミストリートのアトラクションならさすがに大丈夫だろうと思って向かった。
見た感じ、ただ乗るだけっぽい。
ところが、なぜか110センチ制限だった。
こっちはダメだった。
笑えるくらい身長が届いていなかった。
乗った息子と妻の感想が「そんなに楽しくなかった」「乗ってなんか見ているだけだった」で、110cmの制限が謎だった、と。
娘と私は、その間アイスを食べたり、その辺を歩いたりしていた。
これもこれで悪くなかった。
サンリオのグリーティングもやっていた。
ポムポムプリンにテンション上がっていた。
午後にもう一度行ったが、その時はポムポムプリンとキティのダブルで娘のテンションはMAXだった。
結局、娘にとってこの日いちばん刺さったのは、これだった。
大きなアトラクションより、かわいいもので十分らしい。
「これまでで最高の日」と言った。
さすが私の娘、幸福への閾値が低い。
いや、今を全力で楽しむ子供なら、そんなものか。
むしろ、すぐに幸せになっちゃう私が子供なのか。

第7章 — 結局、課金が最強
一方、息子はトランスフォーマーに乗りたがっていた。
見ると、もう80分待ち。
うーん、と思う。
娘が乗れるものが限られている中で、ここに長時間並ぶのはなかなか厳しい。
娘がUSSに飽きるのも時間の問題だ。
で、やった。
ユニバーサル・エクスプレスを買った。
こういうの、少し悔しい。
でも、私は旅行中の支払い時にはいつも目を瞑る。心の中でも実際にも。
結果、80分待ちが3分になった。
これはもう、強い。
大きい声では言いたくはないが、アトラクションの楽しさだけでなく、優越感も得た。
トランスフォーマーはかなり迫力があって、楽しかった。
息子も歓喜。
ジェラシックパークがメンテナンス中だったせいで(おかげで)、ユニバーサル・エクスプレスが3回使えた。
トランスフォーマーを楽しめた息子は勢いついて、リベンジ・オブ・ザ・マミーに乗ると言い出した。
これ、説明を読むとだいぶ怖そうだった。
それでも乗ると言うので乗ってみたら、本当に怖かった。
暗い。速い。ちゃんとジェットコースター。
私も怖かった。
一回転したような気もするが、暗くて速くてよくわからなかった。
中休み場面で、大丈夫かなと息子を見ると、顔面蒼白で「怖い怖い」とつぶやいていた。
顔面がかなりこわばっていた。
「まだ終わってなくもう一山ありそうだぞ」と声かける間もなく、また落ちた…。
でも、終わった後は「怖かったけどよかった」と言っていた。
恐怖が一周回って狂ったのか、興奮していた。
最近、息子がすごく強くなっていく感じがある。
ジャカルタ来たときは、エレベーター乗るのも怖がっていたのに。
とにかくこんなものにも乗れるようになったのかと成長を感じられた。
終わりに
USSを出たあとは、一度ホテルに戻ってから高島屋へ行った。
王将の餃子を食べて、紀伊國屋へ行って、息子の日本語の本を買って、少しだけ落ち着いた。
そこまで含めて、2日目はかなり良かった。
ただ、旅行前半を振り返ると、やはりこうなる。
シンガポールは近い。
でも、AirAsiaを挟むと遠い。
2時間で行けるはずの国に、なぜこんなに消耗しながら辿り着く羽目になったのか。
それでも、USSで叫び、日本語の本を買い、日本みたいなデパ地下を堪能し、少し取り返した気はする。
初日は完全に壊された。
2日目で、なんとか旅行らしくなってきた。
そしてこの旅行は、ここからようやく本番に入る。