
ジャカルタMRTの罰金表を眺めていて考えたこと
ジャカルタのMRTは、思っていたよりずっと快適だ。
車内は清潔で、時間もわりと正確。
少なくとも「電車に乗る」という行為そのものは、日本と大きく変わらない。
むしろ、日本より安心感があると感じる場面も多い。
駅構内や車内には警備員が常に巡回していて、
人の目がしっかり行き届いている。
そんなMRTのホームで、
子どもと一緒に電車を待っていたときのこと。
何気なく立っていた禁止事項の看板を、ぼーっと眺めていた。
罰金表を見て、思考が止まる
そこには、禁止事項とともに罰金額が書かれていた。
日本円にざっくり換算すると、こんな感じだ。
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喫煙:50万円
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非常ボタンの誤用/ドアにもたれかかる:10万円
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拳銃・刃物・麻薬の持ち込み:5万円
……。
いや、待って。


ジャカルタMRTのホーム。電車待ちの時間に、つい見入ってしまった罰金表。
罪の重さ、逆じゃない?
拳銃や麻薬より、
タバコの方が10倍重い。
非常ボタンよりも、
ドアにもたれかかるよりも、
拳銃と麻薬が軽い…。
「罪の重さ、これで合ってる?」
ホームで電車を待ちながら、
主夫はしばらく立ち尽くした。
治安が悪いから、ではない
ここで誤解のないように書いておくと、
これは「ジャカルタは治安が悪い」という話ではない。
むしろ逆なのではないかな。
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MRTは清潔
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警備員が常に巡回
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車内に緊張感はない
だからこそ、この罰金表は
「危険な街だから厳しい」のではなく、
秩序を守るために本気なのだと感じる。
たぶんこれは「頻度」の問題
しばらく考えて、ひとつの仮説にたどり着いた。
これは、
罪の重さの比較ではなく、頻度の問題なのではないか。
正直に言うと、
ジャカルタはタバコを吸う人がとても多い。
路上でも、店の前でも、建物の隙間でも、モールの中でさえも(?!)、
日本より明らかに見かける。
もしMRTで喫煙を許したら、秩序は一気に崩れる。
だから、実際に起きやすいことに対して、
最大級の抑止力をかけているのではないか。
一方で、拳銃や麻薬は、
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そもそもMRTに持ち込まれる頻度が極端に低い
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MRT以前に、もっと重い法律で裁かれる
だから「MRTとしての罰金」は
形式的な金額になっている。
……たぶん。それっぽいことも看板に書いてある。
日本だったら、どうなる?
ここで、日本の感覚と比べてみる。
日本では、
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電車内喫煙
→ 数千円〜せいぜい数万円の過料
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非常ボタンの誤操作
→ 注意・指導、悪質なら賠償
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拳銃の持ち込み
→ 罰金ではなく、即逮捕・重罪
日本は「起きたら大変なこと」を重く罰する社会だ。
一方、ジャカルタは
「起きやすいことを全力で防ぐ社会」
なのかもしれない。
それにしても、拳銃5万円かあ
ここまで考えても、
やっぱり最後に戻ってくる。
拳銃持ち込み、5万円。
……安くない?
安くないけど、相対的に見て、安すぎない?
逆に言えば、
「拳銃を持ち込む人がほぼいない前提」だからこそ、
こんな金額が書けるのかもしれない。
治安が悪かったら、
そもそもこんな看板は成立しない。
「拳銃?いや、誰も持ってこないでしょ?」
という、ある種の信頼の上に成り立っている罰金表。
そう考えると、
この看板は怖いというより、
妙に平和を象徴しているのかもしれない。
今日も主夫は、ホームで立ち尽くしている
子どもは電車を待ちながら落ち着きなく動き、
私はその横で、
「タバコ50万円、拳銃5万円か……
ドアにもたれ掛かったら10万円……」
と、看板を眺めている。
ん?
「拳銃5万円」より
「ドアにもたれ掛かったら10万円」の方が、
よほど現実的で、よほど怖いじゃないか。