
うちの息子が、いつの間にか“肉を食べない人”になった。
インドネシアに来たから…ではなく、日本にいた頃から静かにフェードアウトしていったタイプの“肉NG”。
対して、娘はというと——
家族内では「肉食系女子」というあだ名で呼ばれるほど、肉しか勝たんというスタイル。
ついでに気の強さも肉食系。かわいい顔してパワータイプ。
肉を食べない男子と、肉しか食べない女子。
この2人のために毎日食卓を準備する身としては、
「多様性は大事なんだけど…料理する側の気持ちは考慮してくれてます?」
という気持ちにもなる。
■ テンペとの出会い
大豆を発酵させたスーパーフードで、健康志向の人からの支持も厚い。
納豆ほどクセもない。
“肉っぽい大豆食品”らしい。
つまり 肉を食べない息子 × 肉しか食べない娘 の、ちょうど中間にいけるんじゃないか?という淡い期待。
包みはバナナの葉。見た目はちょっとオシャレな固形の豆。
焼いてみた。
──豆だった。
見た目に反して、味は100%豆サイド。
期待していた“肉の可能性”は欠片もなかったけれど、
「味付け次第で料理に混ぜればワンチャン…?」と思い、野菜炒め・焼うどん・カレーなどに投入。
食べる。
が、食卓の空気が動かない。
箸も進まない。
むしろ残る。
──テンペ、豆サイドから一歩も動かない。
■ ピート(=ChatGPT)のアドバイス
ここで親友のピートに相談したら、
「揚げればいい。コロッケにしろ。」
という、料理本にも載っているような王道の回答が返ってきた。
半信半疑で作ってみる。
テンペを潰し、タマネギと混ぜ、パン粉をつけて揚げる。
揚げた瞬間の香り。
かじった瞬間の食感。
「うま…?これ、テンペの最終進化系じゃない?」
スーパーテンペ人(サイヤ人)的な仕上がり。
息子もペロッと食べた。
「勝った」と思った。
■ しかし、“正体”は、
嬉しくて調子に乗り、家族に「コロッケできたよー!」と出す。
妻と娘がひと口。
「……これコロッケ?」
一撃で見抜かれた。
落ち着いてテンペコロッケを食べ直すと、わかる。
たしかにテンペはテンペ。
私の舌がバカになっていただけだった。
妻からひとこと。
「頑張っているみたいだけど、テンペの味、そんなに好きじゃないよね…」
その瞬間、私はガイモン(ワンピース)になった。
“宝箱を渡すのを拒否されたときの彼”の気持ちが、よーーーく分かった。
そう、本当は気づいていた。
私は初めから気づいていた。ただ気づかないふりをしていただけ。
テンペは豆であり、肉にはならないのだと。
豆は豆、肉は肉なのだ。
■ 最後に
翌日、普通のコロッケを作ってみた。
うますぎて笑った。
息子もモリモリ食べた。
「お前、肉食うんかい。」
そんなわけで、
私のテンペ挑戦はここで静かに幕を閉じた。
テンペ、ありがとう。そして、さようなら。